ジビエというと、欧米での狩猟鳥獣を材料とする食文化の事で、一見農耕民族である日本では無関係なもののように思えますが、山林が国土の7割を占める日本において、鳥獣を食料とする文化は古来から受け継がれ、途絶えたことはありません。

山間部の村では、父親が森で狩ってきたきたウサギやイノシシをしめて食用にする、という習慣は近年までありました。道路が整備され、流通が行き渡り、自給自足の生活が原則でなくなった現代では忘れられつつありますが、昔から行われていたことを行わなくなるという事が、近年住宅地にまで野生動物が降りてきて人や農作物に被害を及ぼす原因の一つになっているとも考えられます。

自給自足率が40%を切る日本において、今再び古来からの狩猟文化に注目が集まり「ジビエブーム」が来ています。しかしそのブームの背景で、問題も起きています。

ジビエブームに乗っかる前に読んでおきたい

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中山間地域を抱える多くの地方自治体がジビエ料理を地域の特産品に掲げ、売り込みを図っています。

農作物や森林を食い荒らすシカやイノシシを駆除するためですが、それだけで食害が防げるはずもありません。おいしくジビエ料理を食べるためには、狩猟から2時間ほどで肉の加工場に持ち込み、適切な処理をしなければなりません。人家に近い里山で狩猟すれば可能ですが、奥山や高山では間に合いません。そうすると狩場は里山に限定されることになります。

ジビエブームが広がり、里山で狩りをすれば一時的に里山のシカやイノシシが減り、食害が少なくなるでしょう。しかし、いずれ奥山や高山から別の群れがやってきて食害を引き起こすことになります。ジビエを普及させるには一定数の食肉供給が必要ですが、一時的にしろ里山のシカやイノシシが減ると安定供給がおぼつかなくなります。これでは産業として成り立ちません。

食害を防ぐためには里山だけでなく、奥山や高山も含めたシカ、イノシシの数の管理が必要なのです。ジビエブームで食害を防げるという自治体の主張には無理があるといわざるを得ません。

「臭みがない」はウソ

最近ではジビエ料理は随分と浸透している印象です。レストランでも「ジビエ料理」の文字は見かけますよね。けれども残念なところがたまにあります。それは「臭みがない」といった文言があることです。

確かに野生の動物を狩猟して調理されているジビエ料理ですから、養殖されていた生き物と比べますと、獣臭さは強いですよ。イノシシでもシカでもウサギでも、やはりスーパーで購入するような豚や牛のお肉と比べますと、独自の獣臭さはあります。

しかし、あの獣臭さが「お肉食べてる!肉食している!」と感じさせてくれるので、肉食の醍醐味とも言えます。ニクニクしているあの獣臭さがより一層ジビエの美味しさを引き出していると感じます。けれども最近では、トマトや牛乳などでしっかりと獣臭さを消したジビエ料理も多く、とくに煮込み系の料理においては食べやすくなっています。

しかしジビエ料理はグリルで獣臭さを十分に感じながらいただきたいと個人的には感じています。